今後の比叡山のあり方を考えるため、総合的な森林調査を基礎とする
「比叡森林継承プロジェクト」を立ち上げます。
人々の暮らしに寄り添い、心の拠り所となってきた比叡山を、先人は「伝教大師の衣の森」として護ってきました。
その想いと共に受け継いだこの空間を次代に繋ぐことは、現代に生きる私達の使命です。
プロジェクト発足の経緯
比叡山の森林は、千二百年もの間、信仰と修行の場として存続し、生活の糧として利用されてきました。また歴史の流れの中で、その時の人々の思いに支えられ、守られてきました。昭和初期、後世に名を残す研究者らにより、二回の総合的な森林調査が実施された記録が残っています。
以来半世紀、人々の暮らしの変化や延暦寺の近代化など、比叡山は時代の変革期にあります。伝敎大師千二百年大遠忌を直前に控え、今後の比叡山のあり方を考えるために、平成の総合的な森林調査を基礎とする比叡森林継承プロジェクトを立ち上げます。
この比叡森林継承プロジェクト事業は有識者や専門家の参画も仰ぎ、次の百年を見据えた平成の大調査事業として、十か年計画で実施いたします。比叡山延暦寺及び 一山が、この時代に生きる者の責任として、次代へ伝えゆくべく、一体となり取り組んでまいります。
プロジェクトの目的
宗教的荘厳さの中にあって、豊かな水を保ち、多くの動植物を育み、様々な資源となる森林を次世代に継承してゆくことを目的としています。
千七百ヘクタールの森林を適切にゾーニングし、それぞれに目標を設定し管理してゆくことを目指し、まず、現状を知ることから始めます。
伝教大師の衣に例えられる比叡山。
祈りを根底に、様々な視点で森をみていきます。
プロジェクト発足の経緯
東に日本一の琵琶湖を眺め、西に千年の都京都を望む位置にある比叡山は、伝教大師最澄上人の開山以来、宗教的に、歴史文化的に日本の一翼を担ってきた母なる山として古来より尊崇され今に至っています。
その比叡山の捉え方は「比叡山=山=延暦寺」であり、すなわち山林も含めた比叡山全体を以て延暦寺と考えられてきました。
従って延暦寺において山を護る意味からも山林施業を行うことは当然のことであり、比叡山全体の環境が宗教的情操を深化させるということに繋がります。
延暦寺では「御山を御大師様の体と思い、御山の木々を御大師様の衣と考えよ」という意識のもとで作業することが伝統となって、伐採と植栽を繰り返してきました。
我々が先人先輩がたから受け継いだ比叡山を次の世代に伝えることは我々の使命でもあり、百年後も胸を張って参拝していただけるような比叡山を、早急に考えなければなりません。