声明とは法要儀式に際し、
経文や真言に旋律抑揚を付けて唱える仏教声楽曲です。
伝教大師最澄が中国(唐)に渡り天台の教えを伝えたおりに、声明も伝えられましたがこれを、体系的に伝えたのは慈覚大師円仁(えんにん 794~864)です。
その後、良忍(りょうにん 1073~1132)により京都大原に声明の道場(魚山 ぎょざん)が開かれ、ここを中心に天台声明は伝承されてきました。
平安時代には声明と雅楽・舞楽との合奏曲も作られ浄土信仰とも重なり盛んに奏されたといいます。 現在でも天台宗ではほとんどの法要に声明は使われ、また、舞楽法要などは伝統音楽として、公演公開されています。
三礼(さんらい)
仏教の基本的な要素である仏(如来)とその教えである法(仏法)、その教えを実践する人(僧)の三つに帰依し、礼拝する声明。経典読誦法要などの最初に唱えられることが多い。
再生する如来唄(にょらいばい)
出典は『勝鬘経釈迦歎仏偈』である。仏の徳を称える偈文であるが、全文は唱えず一部省略して唱える。
如来妙色身 世間無與等 無比不思議 是故今頂礼
如来色無尽 知恵亦復然 一切法常住 是故我帰依
(赤字の部分を省略している)
また、この偈文はいろいろな旋律で、唱えられている。
始段唄(しだんばい)では「如来妙色身 世」の部分を独特の旋律で唱え、中唄(ちゅうばい)では「間無與等 無比 不思議」の部分。行香唄(あんきゃんばい)では「如来色 無尽 知恵亦復然 一切法常住 是故我帰依」の部分を唱える。これらの「唄 」は大原魚山の伝法が必要でこの伝法のことを「唄伝」(ばいでん)と言う。
散華(さんげ)
道場に本尊・聖衆を招請し、香を献じ華を散じて供養するために唱えられる曲で、三段からなる。
上段の出典は『金剛頂経』、中段は『倶舎論』、下段は『法華経』巻三化城喩品。中段の句は法要の本尊により異なる。
本儀には三段すべて同音より次第を取り、上段は列立のまま、中・下段で行道を一匝しながら唱えるのであるが、近年は上段のみ同音散華で唱えて行道することが一般的になっている。
四智讃梵語(しちさんぼんご)
梵語讃(ぼんごさん)とはサンスクリット音を漢字で表記した声明曲である。内容は仏の四つの知恵を讃える詩で、鏡のようにあらゆるものを差別なく現し出す智(大円境智)、自他すべてのものが平等であることを証する智(平等性智)、平等の中におのおのの特性があることを証する智(妙観察智)、あらゆるものをその完成に導く智(成所作智)の四つが唱えられる。
起立して唱える「列讃」(れっさん)、歩きながら唱える「行道讃」(ぎょうどうさん)などの通称がある。曲は緩やかな旋律で儀式の始めに唱えられることが多く、道場の静粛を促す。唱え終わってドラとシンバルに似た打楽器である鐃(にょう)と鈸(はち)が鳴らされる。
再生する四智讃漢語(しちさんかんご)
別名、着座讃(ちゃくざさん)ともいう。四智讃梵語が起立して唱えるのに対して着座して唱えるためこのように呼ばれる。内容は梵語讃と同様の内容である。唱え終わって鐃(にょう)と鈸(はち)が奏せられるのも梵語讃と同様である。
再生する諸天漢語讃(しょてんかんごさん)
諸天漢語讃(しょてんかんごさん)は『大雲輪請雨経』の一節で、仏法護法の天部衆を賛嘆する声明曲である。大般若転読会や護摩、地鎮作法など祈願法要に多く用いられる。曲は定曲という四拍子の曲で、三段に分かれており、各段の終わりに鐃(にょう)と鈸(はち)が打ち鳴らされる。
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